2012年7月16日月曜日

アニメ、音楽番組も開始! ドコモ「dマーケット」

 NTTドコモのスマートフォン向けコンテンツストア「dマーケット」に、2012年7月3日から新たな定額課金のコンテンツが加わった。音楽をストリーミング配信する「MUSICストア セレクション」(月額315円)と、アニメ番組が見放題になる「アニメストア」(月額420円)の2つだ。
MUSICストア セレクションは、レコチョクの提供する楽曲、約100万曲から売れ筋の曲をセレクトし、通勤・通学中に聴ける長さの番組として編成されたものが50本用意される。再生履歴を基にした自動選曲機能や、SNSとの連携機能はないが、それぞれシーズンやテーマに合わせた選曲により、定期的に内容は更新されるという。

 アニメストアは、今年5月に角川書店と共同で立ち上げた新会社ドコモ・アニメストアのサービス。「魔法少女まどか☆マギカ」「涼宮ハルヒの憂鬱」「新世紀エヴァンゲリオン」「けいおん!」「ルパン三世 1st series」など、メジャーな作品を中心に約500タイトル、約1万エピソードの豊富なコンテンツを用意する。

 dマーケットには、これまでにも約5000タイトル、2万エピソードの映像作品が見られる定額サービス「VIDEOストア Powered by BeeTV」(月額525円)、そして個別課金の「MUSICストア docomo×レコチョク」、漫画や小説など約3万タイトルの電子書籍を配信する「BOOKストア」が提供されてきた。

 ガラケー(フィーチャーフォン)からスマートフォンへの移行で、課金コンテンツの伸び悩みが言われているが、そうした風評に反して同社のスマートフォン向けコンテンツビジネスは順調だという。「VIDEOストアは150万人が利用している」(同社)。その理由はどこにあるのか。NTTドコモのdマーケット担当者に聞いてみた。

VIDEOストアはすでに採算ベース

――まずdマーケットを立ち上げた背景から教えてください。

渡辺氏:(従来の携帯電話向け)公式サイトの市場が全体的にシュリンクしつつある中で、まずライトユーザーに一度コンテンツを使っていただくのが、市場全体の伸びにつながると考えました。それでスマートフォンの良さを知っていただこうというのが狙いです。

――ライトユーザーとはどのような人たちですか?

渡辺氏:キャリアメニューは触るものの、有料サービスを使ったことがない人です。つまりコンテンツ利用のライトユーザーということですね。iモードでもコンテンツを利用している人は半分くらいですから、その人たちに利用してもらおうということです。

――ライトユーザーが有料コンテンツを使わない(購入しない)理由は何ですか?

渡辺氏:サイトが安心かどうか分からないのが1つの理由ではないでしょうか。ならば、まずNTTドコモが提供しますので使っていただけませんかと、そういう提案をしようと考えました。それでdマーケットで、ドコモポイントを利用できる環境を作りました。さらに深いサービスについては、コンテンツプロバイダーのサービスを使っていただいてもいいですし。

――「MUSICストア セレクション」や「アニメストア」を定額料金にした理由は?

渡辺氏:使い放題というのがシンプルで分かりやすいと思ったからです。個別課金だと、いくら使っているか不安なお客さんも多い。ただ、いくら使い放題でも1000円や2000円では皆さん引いてしまいますから、315円から525円という、今までの感覚に収まるような値付けにしています。

――それで儲かりますか?

伊藤氏:VIDEOトアは150万人が利用しています。月額525円ですので、十分採算ベースに乗っています。スマートフォンでそれだけのサブスクリプションモデルは、今までにないんじゃないかなと思います。

――VIDEOトアで利用者が増えているのは何が要因だと分析していますか?

伊藤氏:分かりやすさだと思います。525円で5000タイトルという。

宮原氏:スマートフォンになって、ある程度画質的にストレスなく見られるようになってきたのも良いところかなと思いますね。

渡辺氏:画面が大きいと全然印象が違ってきますよね。今までもサービスはあったんですが、画面が大きくなるとバリューアップするというのはあります。フィーチャーフォンの動画視聴時間より、スマートフォンの方が圧倒的に長い。5、6倍は違います。

――どんなコンテンツが人気ですか?

渡辺氏:やっぱりドラマですね、韓流とか。「24」とか「プリズン・ブレイク」みたいな海外ドラマも、レンタルビデオに行かなくても見られます。でもお客さんには、まだフィーチャーフォンの画面サイズのイメージがありますから、まず体験してもらわないと分からないんですよね。

電子書籍では女性の利用が目立つ

――逆にヘビーユーザーは何に使っていますか?

渡辺氏:我々の提供しているもの以外だとソーシャルゲームですが、特に女性は少女コミックを電子書籍で読み込んでいます。電子書籍って男性のイメージなんですけど、利用者の8割くらいは女性なんです。スマートフォンへの乗り換え比率は男女同じくらいなんですが。

宮原氏:女性は貯めていたポイントにこだわります。

――それを使ってコンテンツサービスを使ってみようと。

宮原氏:初期のスマートフォンはポイントの引き継ぎができなかったので、できるまで待つという人が多かった。それがdメニュー(※1)で可能になり、対応機種が増えたタイミングで、利用者も増えたように思います。例えば、「ルナルナ」(※2)のようなサービスだと、過去のデータもメールで引き継ぎはできるんですが、なかなか抵抗がある。それが自動的に移行できるなら安心ですよね。

※1 昨年11月に提供を開始した「iモード」のスマートフォン版ポータルサイト。iモードで利用しているサービスがスマートフォン側でも提供されていれば、課金も含め自動で引き継がれる。

※2 女性のためのポータルサイト。生理日や基礎体温のデータから次の生理日などを予測する。会員数200万人。(関連情報)。

――ユーザー1人がコンテンツにかける平均的な金額はどれくらいですか?

渡辺氏:平均だと600円くらいですかね。

伊藤氏:全ユーザーでならしちゃうとそれくらいですけど、使っている人は使っています。

渡辺氏:例えばBOOKストアに関しては、1カ月の利用額は2000円くらいなんですよ。コミックは月5冊以上読んでいる人が3割くらいですね。

宮原氏:止められないですからね、一度読み始めてしまうと。

アニメストアでは新作制作も

――好調なVIDEOストアを受けて、アニメにも広げてやろうというのが「アニメストア」の狙いですか?

宮原氏:ドラマは幅広い利用者に浸透していますが、アニメ好きな人は、深い作品がお好きです。今まで見放題というと、バンダイチャンネルさんのサービス(※)しかなかった。メジャータイトルは見放題に入らず、個別課金になる。今回はそこらへんも見放題にしていこうと思っています。

※ PC、スマートフォン、タブレットに対応する月額1050円のサービス(関連情報)。

――アニメストアは角川書店と作った新会社で運営していますが、配信作品は角川系だけじゃないですね。

宮原氏:角川書店さんは、アスキー・メディアワークスさんも含めて、やはりアニメ業界に強い。あくまでも調達の業務委託を新会社でやるということです。コンテンツはいろんな会社からいただいています。新作の作品調達もやっていこうと思っています。

――出資をして、TV放映と一緒に配信することもありますか?

宮原氏:はい。そういうことも一部やっていこうかと思っています。アニメファンは日本の津々浦々にいらっしゃる。でも東名阪でしか放送されていない番組が多いので、スマートフォンで見られるのは大きな付加価値と思っています。

※この7月からテレビ放映が始まった「薄桜鬼 黎明録」「アルカナ・ファミリア」「TARI TARI」「ゆるゆり♪♪」の4作品も、同時にアニメストアで配信されている。

――画質はどれくらいですか?

宮原氏:解像度はエンコーディングによって違うと思うんですが、画質は3つ選べるようになっていて、一番良い画質では1.5Mbpsです。

――アニメストアの利用者数などの目標はありますか?

宮原氏:アニメはVIDEOストアより小さい目標からやろうと思っています。2、3年後でも100万くらいと予想しています。それくらいコア層に長く支持してもらえるものにしたい。VIDEOストアもありますので、パイを増やすよりも、アニメファン向けのサービスに特化していきたいと考えています。

スマートフォンで音楽配信は微増へ

――音楽配信はスマートフォンへの移行で急激に減ったわけですが。

渡辺氏:フィーチャーフォン向けでは減っていますが、スマートフォンでは伸びています。特にシングルのような個別課金が伸びています。それで全体を足した売り上げで言うと微増です。

――昨年より?

渡辺氏:そうですね。我々の狙いは、まだ音楽をスマートフォンで聴いたことがない人に、これで聴いてみませんか? という提案をすることです。いま音楽を聴いている人たちにこのサービスを使ってください、というのではありません。例えばスマートフォンになっても意外と着うたが売れるんです。「さあスマホだ音楽配信だ」というより、まず「着信音何にしようかな」なんです。スマートフォンになっても皆さん、最初の挙動は変わりません。

――「MUSICストア セレクション」で音楽を聴いていてダウンロードする仕組みは?

伊藤氏:個別に買いたい楽曲に関してはリンクから買えるようになっています。

――ストアで売っている曲をストリーミングで流すということですね?

伊藤氏:そうですね。50プログラムをシチュエーションや年代を分けて流しています。編成はレコチョクさんとやっています。年代や季節とか、卒業式シーズンならそれにあったものなどです。

――利用者はラジオを聴いている感覚だと思うんですが、ストリーミングは電波の途切れる地下鉄でも聴けますか?

伊藤氏:ずっと圏外が続いてしまうとダメですが、ある程度バッファリングしていますので、1駅くらいでしたら大丈夫です。

――ライブラリー全体の曲の傾向はどうなんでしょう? 

伊藤氏:基本は邦楽、J-POPです。洋楽は少ないですね。

――KDDIのLISMO unlimitedのようなオンデマンドサービスに発展する予定は?

伊藤氏:今のところ考えていないです。ライトユーザーを囲うにはこの方がいいんじゃないか、ユーザーの掘り起こしにつながるんじゃないかなと思っています。膨大な中から検索するとなると、結局1曲ずつ配信している方式と変わらなくなると考えています。

――一般のラジオだったらRadikoのようなアプリで無料で聞けるわけで、315円を出す意味はどこにありますか?

伊藤氏:まずプログラムを選べる点ですね。ラジオだと一方的に聴くだけですから。アーティスト特集を組んだりしますし、業界自体を盛り上げる入り口として使ってもらえればと思います。

――プロモーションツールとして送り出し側のメリットはあると思いますが、ライトユーザーほど課金に厳しい気もします。無料の方がいいんじゃないかという声はありませんでしたか?

伊藤氏:無料だとビジネスモデルが成り立たちません。今までだと1曲買うのに420円。それよりも聴ける曲が多くて315円というのは、今まで聴いたことのない層を掘り起こすには、十分な価格じゃないかと思っています。

実は利用率の高いキャリアメニュー

――スマートフォンではキャリアメニューなんか見ないという話も聞きます。

渡辺氏:フィーチャーフォンよりスマートフォンの方がキャリアメニューに行く比率が高いんですよ。イメージは逆じゃないですか。でも「さあオープンだよ」と言われても、何をしたらいいのか分からない人の方が多い。それでキャリアメニューを押して、フィーチャーフォンのころから親しんだものを探すという。

――ひょっとしたらiモード時代以上にうまくいく可能性がある?

渡辺氏:ありますね。Androidになったらお金が取れないという風評がありましたけど、我々に見えている数字と全然違います。今、端末を買うと、dマーケットのアイコンがホーム画面に出ていますから、そこを押すのが自然の流れです。ブラウザーを起動するとdメニューがデフォルトになっていますし。スマートフォンのコンテンツの有料化が失敗しているという風潮が強くありますから、実は違うという話は、我々としても徐々に出していきたいです。

――いつ出すんですか、数字は。

渡辺氏:そうですね、いつ出しましょうかねえ(笑)。ガラケー時代と消費傾向は変わらないんです。ただスマートフォンの方が若干上に振れているという感じです。

伊藤氏:コンテンツを使うということでは、むしろ拡大していくんじゃないかと思っています。

――では、dマーケットの全体としての今後の狙いを教えてください。

渡辺氏:同業他社さんはサービス全部をパックにして分かりやすくという形だと思うんですが、我々は一個一個のサービスを磨き込んでいって、その横幅を広げていく戦略をとります。この冬にゲームとeコマースを増やす予定になっています。デジタルだけでなく物販もやろうとしています。

――ああ、それでタワーレコードを子会社化したり。

渡辺氏:……まぁ、色々と動いているんですが、それ以上は私の口からは言えません。あとは横に広げた柱をクロスしていくのが我々の戦略です。音楽を買った人に、関連する動画やeコマースを推薦したり。

――アニメだったらコミックもあるし主題歌もあるしと。

渡辺氏:そうです。そういうレコメンドエンジンを横串で入れようというのが、今後の戦略です。それで縦にも横にも伸ばしていこうと。


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